「ぼくらのバラード」 1-4 ストリートって?

 こんな僕らは、五年近くを過ごし、

 そして今、高校二年生の冬を迎えていた。

 

 新体制になって初ミーティングだ。

 「ポピュラー・ミュージック・クラブ」の活動予定を決める。当然、会議の進行は、部長の僕がするのだが、こういうのは苦手だ。まつりが一番よく知っている。

 笑っていた。おかしくてたまらないという感じだ。「がんばってね」と手を振ったりする。

 確かに、僕たちの仲はいい。

 そうなのだが、付き合っているわけではない。周りも理解している。毎日のように、二人で下校するが、それは同じスクールバスに乗るからだ。

 付き合ってはいないのに、なぜか、まつりファンの下級生からは妬まれている。でも、もう慣れてしまった。

 必死で、議題を進める。今後の行事計画だ。

 年明け二月にクラブ内コンサート。四月の新入生歓迎ライブ。夏の軽音楽コンクールに秋の文化祭。

 いつもと同じスケジュールだから、反対意見は出ない。

 夏休みにクラブ内で発表会をやりませんか。新しい提案が下級生から出て、可決された。頼もしいぞ、後輩たち。

「これでミーティングを終わります。終業式の日、クリスマスパーティーを兼ねて、先輩たちのお疲れ会です。各グループ、一曲準備してください」

 部員たちから「はーい」、「オッケーです」という声が返って来た。やれやれ、とりあえず終わった。

 ほっとして、部室の隅に行った。部長が下手くそだと格好が付かない。少し練習をしようと思い、ギターを抱えると、まつりが近付いてきた。

「かっこいい。さすが部長」

 彼女が言う。何かある。

「惚れる。好きになりそう」

「あのさ」

 早く本題を言いなよ。

「ひとつ提案、って言うか、お願いって言うか」

 珍しい。単刀直入ではない。彼女を見た。笑顔。

「ストリートでやらない? 二人で、路上で」

 すぐに返事ができなかった。

「え、なんで」

「だって、行事と行事の間、長いじゃない。いつも思ってたんだ。人前に出る機会、もっと多い方がいいって。路上なら確実に聞いてくれる人、いるから」

 なるほどと思ったが、聞きたかったのはそこではない。

 どうして「二人で」なんだ。五年間、それぞれソロでやってきた。まつりはキーボード、ヒカルはギターの弾き語り。なのにデュオで人前に。しかも路上。

 関係のないことを言っていた。

「学校の許可、取らないと。高校生が校外で、しかも路上なんて」

「そんなの許可出るわけないよ。いくらチャラ先でも無理。バレないところで演奏するの。シークレットライブね」

 ぼくらの会話を、部員全員が聞いている。興味津々だ。すでにこの時点で、シークレットではない。

「帰りに家(うち)に寄って。打ち合わせしよ」

 そうだ、私、担任に呼ばれてたんだ。思い出したように言って、まつりが部室を出て行くと、僕の周りに人が集まった。

 後輩が言う。

「まつり先輩の家に行くんですか。羨ましすぎです」

「そこ?」

 大熊が冷やかしに来た。

「相変わらず、尻に敷かれてるな」

「そんなことないって」

 言い返したが、その通りだと思う。

 まつりペースで、物事は進み、地球は回る。