「ぼくらのバラード」 1-7 オリジナルって

 期末考査は手応えがあった。親の文句を避けたい気持ちがモチベーションになった。

 テスト明け、練習を始めた。

 ソロでやっていた同士だ。入り方やテンポが違う。微妙な差を調整していった。

 僕は拓郎の「舞姫」、「やさしい悪魔」、そして「落陽」。まつりは「糸」、「空と君のあいだに」と「時代」を歌うと決めた。

「有名な曲、ばっかだね」

「まずは、人を集めないと。だからいいの。ヒカルこそ『やさしい悪魔』って。それ、アイドルが歌ったやつだよね」

キャンディーズね。よく知らないけど」

「おじさん向けだなあ。年金暮らしのおじさんしか来ないと思ってるの」

「心外だなあ。いい曲だって。すべての世代に愛される名曲」

「はいはい、練習、練習」

 数日合わせると、息が合ってきた。キーボードとギターのアレンジ。音の厚みには欠けるが、シンプルでいい。まつりママが親指を立てて「いいね」サインをしてくれた。スタジオをモニターしていたのだ。それはそれで、ちょっと怖いけど。

 練習は楽しかった。時間が過ぎるのが早い。明後日は終業式。午後から、先輩の前で一曲披露することになっている。

「どれ、やる? まつり」

「二人だから二曲やったらだめかな」

「だめでしょ。そのルールだと、大熊のところ五曲やるよ」

「そうだね。それは耐えがたい。ヒカル、決めて」

「ここは『糸』でしょ」

「えー、ヒカルがメインでいい。部長なんだよ」

「誰も喜ばないよ。まつりが目立たないと」

「ヒカル、いつも私を立ててくれるけど」

「あたりまえじゃないか。みんな、まつりが見たいんだって」

「うれしいけど」

 歯切れがよくない。気にはなったが、二人で一曲だと主張した。最後はまつりも納得した。

「もう一回、練習しておこう」

 僕が言って、最初のコードを弾いた。まつりが合わせてくる。

「なーぜ、めぐり……」

 線は細いが、かわいい印象だ。邪魔をしないようにコードを進めて行く。いい仕上がり。
「ありがとう」

 歌い終わって、まつりが言う。

「合わせるの、気持ちいいね。もっと早くやればよかったね。高校生活、あと一年ちょっとだね」

 僕も「そうだなぁ」と思った。思ったが、こんな感傷的なこと言うなんて変だぞと身構える。まつりの表情が変わる。

「ヒカル。このあと、私が変なことを言うと思ってるでしょ」

「違うの」

「違うよ」

「そうなんだ。それならよか……」

「オリジナル、作らなきゃ」

「え」

 

「オリジナル曲、私たちの」